これまでの『エール』感想レポ
家の事情が重なったこともあり、朝ドラの感想をしばらくお休みしていました。第7週はまるまる見ることができなかったので録画していたBSを一気見してなんとか第8週に追いついたという状況です。
これまでの朝ドラの傾向だと結婚した後のエピソードが少しトーンダウンする印象が多かったのですが、今回の『エール』は結婚生活後の展開も非常に面白いです。一度テンションが落ちかけた銀行編が割かし早めに区切りがついたことも大きかったかもw。原作者が序盤で降りてしまったために複数の脚本家さんが担当するというニュースが流れ不安もあったのですが、私は今のところ今回の朝ドラを面白いと好意的に見ています。
そして何より、ミュージカルで活躍する役者さんが多く出演するのも嬉しい。ミュージカル界からは山崎育三郎くん、小南満佑子さん、柿澤勇人くんが新たに登場(いっくんはチラ見せ登場を経て本格的に第7週から登場)しました。
佐藤久志役のいっくん(子役ちゃんとそっくりw)はここ数年テレビドラマやバラエティにも進出して多少名前を知られるようになっていますが、小南さんと柿澤くんは映像の世界ではまだほぼ知られていない存在だと思います。
夏目千鶴子役の小南さんは『レ・ミゼラブル』でコゼットを演じたこともあるほどの実力派女優さん(いっくんとの歌唱シーンはマリウスとコゼット!って目で見てしまったw)で、お兄さんもダンサーとして多くのミュージカルの舞台(エリザベートなど)を踏んでいます。
山藤太郎役の柿澤くんは劇団四季に在団していた頃から主役級の役を演じていましたが、早い時期に退団した後も多くの舞台で重要な役を演じる実力派の若手ミュージカル俳優さんです。NHKでは大河ドラマ『平清盛』で以仁王役を演じていました。
そのほかにもRADWIMPSの野田洋次郎くんや、「あまちゃん」の太巻がちょっとちらつくw古田新太さんも良いキャラしていて面白い。そして、今も亡くなったことが信じられない志村けんさんの重厚な存在感もドラマを引き締めています。
そして今週の第8週のサブタイトルは『紺碧の空』。
早稲田大学の応援歌誕生までのエピソードが描かれていて、キーパーソンとなる応援団長の田中隆役として三浦貴大くんが登場してきました。バリバリ博多弁の超熱血キャラが面白く、目が離せません。三浦君、ちょっとお父さんに雰囲気が似てきたね。
コロンブスレコードから依頼された仕事もまともにできず、同期の木枯正人にも先を越されてしまった裕一。袋小路に迷い込んだ彼のために久志と音がお膳立てした「早稲田大学応援歌」作成依頼を受けても全く曲が思い浮かばない。締め切りが迫るなか、追い詰められた裕一は自分の実力を誇示するかのように交響曲を書き上げて小山田耕三のもとへ持っていきますが「で!?」と返されただけで相手にもしてもらえなかった。
そんな時、締め切りギリギリになっても曲が上がってこないことに痺れを切らせた早稲田大学応援団員が家まで押しかけてきましたが、裕一は「ただ弱いから勝てないんだ」という身も蓋もない言葉を投げつけてしまい向かい合うことを拒絶してしまう。
そんな彼の姿を目の当たりにしてしまった音は、その日の夜、裕一に黙ってひっそり豊橋の実家へと帰ってしまいました。
音が実家へ戻ってみると、吟が婚約者の鏑木と共に帰省していて嬉しそうに家族に報告をしているところでした。何度かお見合いをしていたようですが、やっと良い人と巡り会えたようですね。でも少し心配なのは、鏑木さんが軍人だということ…。この頃はまだ戦争の色が濃くなっていないようですが、後々哀しいことになってしまうのではないかと心配です。
「軍人が命を懸けて戦えるのは、誰かの為だからです。祖国、両親、友人、戦友のために戦うのです。裕一さんはどうですか?」
裕一の状況について意見を求められた鏑木が答えた言葉が重く響いてきました。
その夜、母と久しぶりに語り合った音は「一人になって寂しくない?」と問いかけますが「娘が元気で愛する人と暮らしているなら十分」と笑顔を向けられ思わず黙り込んでしまった。あの笑顔は本心なのか強がりなのか…どちらにしても、なんだかちょっと切ないよね。
そういえば、岩城さんはその後どうしているのだろう?ずっとひそかに光子さんを想い続けているのかな…。そのあたりのストーリーも見てみたいところです。
一方、音に出ていかれた裕一は久志を呼び出して自分の苛立ちをぶつけていました。久志君も人が良いねぇ~w。さらには裕一が書いて小山田先生に軽くあしらわれてしまった交響曲についても「そこまで悪くないと僕は思うぞ」と前向きなことを言ってくれる。なんだかんだで裕一のこと気にかけてくれてるんだよ。
音がいなくなったことで冷静さを失った裕一に対し、久志は「応援歌で出ていってしまったのなら応援歌を書くしかないだろう」と尤もな意見を語る。それでも「書けないんだってば!」と興奮する裕一に「彼女を取り戻せるとしてもか?」と問いかける久志。これを言われては、裕一も返す言葉が見当たらない。
翌朝、朝食の席には久志君もいました。結局泊まり込みになっちゃったわけか(笑)。それにしても…二人で納豆をグオングオンかき混ぜる姿はなんだかとても可愛らしくて和む~~(笑)。
裕一はその後も何とか早稲田の応援歌を書こうと努力はしたようでしたが、結局は何も浮かんでこずに諦めてしまったらしい…。たぶん西洋音楽へのこだわりが強すぎて心のどこかでそれ以外の音楽を見下しているようなところがあるからなんじゃないかなぁ。変なところプライド高いからねぇ(汗)。自分の書きたい音楽をやらせてもらえないというフラストレーションが、仕事に影響しているような気がしてなりません。
その頃、東京に戻ってきた音は応援団長の田中の元を訪れて、もう一度自分の言葉で裕一に曲を書くよう説得してほしいと頼み込んでいました。「俺は頭も悪いし口下手ですけん!」と自分を卑下しそれを拒絶しようとする田中に対し、音は「わかってる!!」と食い下がろうとしてくる。
さすがにこれには田中くんも「え…」と凹んじゃったみたいねw。音ちゃん、そこは否定してあげなきゃ可哀そうだよ~~(汗)。しかし、音の熱い想いはさらに突き進んでいく。
「口下手でもいい、あなたの想い、気持ちを伝えて!裕一さんの心を動かして!!凝り固まった頭を吹っ飛ばして!!!いい!?早稲田の勝利、小山家の未来、小山裕一の音楽人生の全てはあなたの双肩にかかっています!!!頑張ってっっ!!!!」
いや~~~、音ちゃん、応援団員も真っ青な迫力だったわwww。あの田中くんもあまりの彼女の剣幕に何も言い返せず状態になっちゃってたしね(笑)。でも彼女も裕一のために必死なのです。まぁ、小山家の未来までを田中君に背負わせてしまうのは酷ってもんだけどねw。
同じころ、裕一は呑気に縁側でまったり。そんな彼にかいがいしくシュークリームのお土産を買ってくる久志。無理に曲を書かせようとせず、裕一が曲を書く気になるまで学校にも行かずに付き合うと言ってくれている。良い奴すぎるぞーーーー久志!!!
シュークリームに顔をほころばせながらも、裕一は自分が変わってしまったから曲が書けなくなったんだと話す。それに対して久志は「それは違うよ」と彼の言葉を否定する。
と、そのとき音に焚きつけられた田中が今度は一人で小山家を訪れる。裕一が動揺してオロオロしていると、久志は音もなくその場から姿を消してしまっていました。子供のころから神出鬼没な行動を繰り返してきましたがw、大人になってからさらに気配を消していなくなる技術に磨きがかかったんじゃないですかね(笑)。
でも、ここは久志君、空気を先読みしたんだと思いますよ。裕一にとってのきっかけが訪れるのではと予感して姿を消したんじゃないかな。
逃げ腰だった裕一でしたが、観念して田中の話を聞くことにします。田中は静かに応援団に入るまでの経緯を語り始める…。
田中はかつて野球少年で、幼いころからの親友・清水とバッテリーを組んでいたという。ところが、中学生の頃に田中がわざと遠くへ投げたボールを取りに走った清水が足に大怪我を負ってしまい野球ができない体となり学校も辞めてしまった…。
しばらくした後、思い切って清水に会いに行った田中が「何か俺にできることはないか?」と尋ねると、彼は「強いて言うなら、早稲田ば勝たせてくれや。それが一番の楽しみやけん」と答えたという。
この時に親友の言葉を聞いて、田中は初めて「野球を頑張っている人のラジオを聞いて頑張れる人がいる」ことを知ったのです。
「頑張ることは、繋がるんやって…。そしたら、俺にできることは何か…。野球の技量はなか。選手が活躍するために応援することしかないんじゃないかって思って…」
当時を思い出してぼろぼろと涙を流しながら懸命に裕一に想いを伝えようとする田中くんの姿を見ていたら、見ているこちらも胸が熱くなってしまって涙が止まらなかったよ(涙)。彼が応援団に入った経緯には、こんなにも切ない物語があったんだね…。「頑張ることは繋がるんだ」というセリフは特に泣けました…。
しかし、早稲田の応援団に入って懸命に応援してもなかなか勝利を呼び込むことができなかった。自分のせいで人生を狂わせてしまった親友の清水くんを元気づけたい一心で入った応援団…。しかしその想いをなかなか届けることができないもどかしさや悔しさが募り、涙でその先の言葉がなかなか出てこない田中君が切なすぎる(涙)。
そんな彼の姿を目の当たりにした裕一は涙を浮かべながらポツリと「なんで僕なんですか?」と尋ねる。すると、涙を拭った田中は笑顔を浮かべながらその理由を語る。
「俺は、器用な奴は好かん。先生は、不器用やけん」
その言葉に思わず「なんだ、賞取ったからじゃなかったのか…」と自嘲してしまう裕一。あの瞬間、彼の中で何か吹っ切れていくようなものがあったんじゃないかな。
ただ人間として純粋に魅力を感じてくれたから曲を依頼してくれたのだと知ったことで、裕一のなかで「受賞者としてのプライド」といった呪縛から解放されていったように感じました。
田中は改めて裕一に「先生、書いてください!清水のために…」と涙ながらに思い出のボールを手渡します。それを受け取った裕一は涙を拭いながら笑顔を見せ、「明日までだね」と書くことを了承。そんな二人のやり取りを、音は玄関で静かに聞き入って安堵の笑みを浮かべていました…。
心が通い合った裕一と田中団長。久志が置いていったシュークリームを初めて口にした田中は「うまか~~!!」と感動の声を上げる。そんな二人の笑い声を、音は離れたところで微笑ましく感じていました。
この何気ないやりとりがものすごく泣けて泣けて…終わった後には涙が止まらなかった。温かい素敵なシーンでした。