村上新悟さんの大河ドラマ連続記録はこの作品から始まりました。まさかこの当時、ここから4作連続で大河に出ることになるなんて思ってなかっただろうなぁ。
2013年大河ドラマ『八重の桜』
脚本・山本むつみ / 主演・綾瀬はるか
本来は違う大河作品を放送する予定だったらしいのですが、2011年に発生した東日本大震災で大きな被害を受けた東北(特に福島)をフィーチャーして応援しようという趣旨で新島八重にスポットを当てることになったそうです。個人的には元来決まっていた作品が何だったのか少し気になったのですが、幕末とはいえ、世間的には知名度が薄いこの人物をどう1年通して描いていくのか始まる前はけっこう興味深く思って楽しみにしていました。綾瀬さんも好きな女優さんの一人ですしね。
全体的には繊細かつ硬派な作品というイメージでした。八重が表舞台に出てくるのが会津戦争に突入してからということもあってか、前半は主役であるはずの彼女の出番はとても少なかったように思います。西島秀俊さんが演じた兄の覚馬が比較的政治の中心に絡んでいたこともあり、幕末、いかに会津藩が翻弄されていったのかを丁寧に描いていて見応えはありました。ただ少し硬すぎな内容かなぁ…と思う回もあったりしたんですけどね。
会津戦争が終結した後のストーリーや人物像も丁寧に描かれていて、八重が教育に携わっていく過程なども面白かったです。
長谷川博己さん演じる尚之助と別れるに至るドラマは特に切なかった…。魅力的だったんで…彼の演じた尚之助 。当時あの展開にショックを受けた視聴者もかなり多かったように思います。ただ、その後に登場したオダギリジョーくん演じる新島襄がこれまた穏やかで優しくて魅力的だったんですよね~。オダジョーがこんなソフトな役を!!と軽く衝撃受けたの覚えてます 。
あと、当時のストーリーで一番話題になってたことのひとつに、綾野剛くん演じる松平容保と市川染五郎さん演じる孝明天皇の関係性がありました。この二人のやり取りのシーンは非常に濃密でしたね。なんというか、主従を超えた何か…みたいなものまで感じさせる…。綾野くん演じる容保さんはもう対面するたびにウルウル状態(真田丸の景勝以上に潤んでましたw)だったのでw、当時のSNSではかなり話題に上っていました。
ちなみに大河放送同時期に民放で綾野くんが出る恋愛ドラマも放送されていまして。ちょうど会津がとてもつらい時期に入っていた頃だったこともあり、大河で傷ついた視聴者の心を癒すドラマとしても話題に上がっていました(空飛ぶ広報官)ww。
村上さんが出演されたのが、ちょうど、ドラマが会津戦争への悲劇に向かってぐんぐん話が進みだした頃の回だったかと思います。時間的には短いですが、2回分出演されていました。
過去作品見て村上さんの名前を見たりすると、なんかこう、気持ちが昂ぶってしまう今日この頃。
以下、少し考察してみようと思います。
第22回 「弟のかたき」
村上さんが演じたのが、薩摩藩士の大山格之助。混乱する東北を鎮めるために新政府が置いた奥羽鎮撫総督府の参謀の一人として任された人物です。事実上の会津討伐のための組織だったために、ストーリー上は敵役的存在でした。
奥羽鎮撫総督府とは東北のごたごたは東北で解決するように…みたいな名目で置かれた組織で、この為に割かれた兵は500人前後と少ないものでした。そのため、黒田や品川といった大物は「とても無理!」と早々辞任してしまい、実質的に残った世良と大山が実権を握るようになったそうな。
「新政府の威信を守るために何が何でも会津を討たなければなりもはん」
薩摩藩士なので、薩摩弁のセリフ回しです!!確固たる会津討伐の意思を感じさせる言い方だし、静かな闘志を燃やしている感じでとてもカッコいい
。しかし、恐ろしいのがこの左側にいる小沢仁志さんが演じる世良修蔵(長州藩)です!!いやぁ…演じてる小沢さんがもう、雰囲気そのまんま、893っぽいのでww、立っているだけで怖い 。しかも、会津降伏の条件は「容保の首を差し出す事…ただそれのみにございます」と、それは恐ろしい提案してきます 。綾野くんが演じてる容保は真田丸の景勝並みにこの頃儚い雰囲気だったので、こんなのに睨まれたらひとたまりもないわ~~~とゾッとさせられたのを思い出します。
小沢さんがこんな感じだったんで、逆に村上さんが演じてる大山さんがすごく冷静な人物に映ります。静かにちらりと世良に目をやった大山@村上さんの表情がとてもいい感じ!こいつ、ヤバイなみたいな視線がクールでカッコいいです 。
この22話は村上さんの出演これきりだったんですけど…八重さん的には非常に切なく辛いストーリーだったんですよね…。戊辰戦争で愛する弟の三郎が戦死してしまったのを聞いてしまって…。もうそのインパクトが当時すごくて泣けたんで、あまりそれ以降の展開は覚えてなかった。こうして改めて村上さん回を見返して、ちょっと新鮮に思います。
(三郎を演じた工藤阿須賀くんは工藤監督のご子息でこれがドラマデビューでした)
第23回「会津を救え」
奥羽鎮撫総督の一行がついに仙台入り。石高の多い仙台藩を会津攻めに駆り立てれば他の藩も同調するだろうということを見越して、トップの九条さんが「会津討伐頼んだぞ~」と緩いながらも仙台藩の伊達さんにプレッシャーをかけてきます。
さらにそこへあの世良が「奥羽の賊徒は奥羽で片づけるっていうのがトップの考えだからな」とさらに追い詰めるという…あの場にいた仙台藩の皆さんはまさに心臓が縮む心境。存在そのものが、ほんっと怖すぎる小沢さん演じる世良。
そして、世良は態度もやたらデカイ。ぞんざいに大きな盃に酒を注ぎ飲み干そうとしたとき、ようやく仙台に訪れた桜前線の桜の花びらが落ちます。「今頃こっちは桜が来てるのか」と呟いた時、大山さん出番。
「京ではと~うに散っちゅいもしたなぁ~」
あまりにも世良が893なのでwww、やけに爽やか青年に見えるよ、村上@大山さん。なんかちょっと、このシーンだけ癒し系(笑)。桜の花びらごと酒を飲み干す世良を後ろから静かな目線で見つめていました。
このあとの、世良の詩が…これまた怖い。
「陸奥の、桜狩りして思うかな、花散らぬ間に、軍せばやと」
おまえら田舎者なんか、ここで会津討って手柄立てなきゃ到底上には行けないんだからな!とさらなる釘を打つという徹底した脅しっぷり。大将の九条さんですら「あいつ、ヤバイんじゃね?」みたいな視線を送ってるほどですよwww。まさに、草笛さんのナレーションの言う「地獄の使者」って言葉が当てはまる小沢さんの世良でしたね。
村上@大山格之助さんの出番はここで終了となります。あまりにも小沢@世良の存在が怖すぎたので、敵キャラながらも爽やか青年に見えてしまう不思議がありました(笑)。
こののち、大山さんの動向については触れられませんでしたが、世良の末路は描かれています。
もともと仙台藩は会津を討つ気持ちがなくて、東北皆で協力して会津助けましょう!みたいな空気になるのですが、世良に恐ろしい形相で却下されてしまう事に。そんな最中、世良が京の総督府に当てた密書が仙台藩士の知るところとなり、そこには「奥羽皆敵とみて討つべし」と書かれていた。
「あいつほんとヤバイ奴だ」と決定的な危機感と憎悪に駆られた彼らは、宿屋でやりたい放題暴れまくって酔いつぶれ状態だった世良を斬り捨ててしまいます。
この事件によって、東北は新政府に逆らう存在として結束を強め奥羽列藩同盟を組んで戦へと向かっていくことになります。
ちなみに、大山格之助は庄内討伐担当だったようですが連戦連敗だったらしい。とりあえず世良の巻き添えで一緒に殺されなくてよかった。
この大河での村上さんの登場はわずかなのですが、作品としてはとても丁寧に繊細に描かれていた秀作だと思います。個人的に幕末ものが好きなので、知らない事件や人物がたくさん出てきたりしてとても興味深く見ました。女性が主人公の大河ドラマはあまり好まないんですけど、そんな中でこの『八重の桜』は好きだったんですよね。ぜひチェックしてほしい一作です。