ストーリーの感想(陰)
他にも楽しいシーンや素敵なシーンはとても多かったのですが、全てに満足・・・とは私はちょっと至らなかったんですよね。本当は役者視点中心で見て楽しみたかったんですが、その前に”舞台作品”として見て感じる部分も大きくて。違和感も少しあったので、正直に書きたいと思います。
まず、これは違和感とはまたちょっと異なるかもしれませんが・・・、主役は完全に小栗さくらさんが演じた武蔵野真里だったと思います。
新人社員として『とちラブ』に入社した真里が、最初は自分の思い描いていた世界と全く違うことに戸惑いながらも必死に前を向いてくらいつき奮闘。
取材を進めていくなかで地域の人たちと触れ合い、そこで感じた想いを形にするためにさらに孤軍奮闘していく。最初はほとんどやる気がなかった壬生や小山がそんな彼女のひたむきな姿を目の当たりにしついに心を動かされ、イベントに向けて心をひとつにしていく。
つまり、ドラマの物語が武蔵野真里を中心に全て動いていたんですよね。舞台上手にあったバーのシーンも全て彼女が中心だったし(壬生と小山はバーの存在も知らなかったんじゃ・・・w)、出番の時間も二人よりも多かった。
テレビドラマにするとしたら、トップに名前が来るのは確実に真里を演じたさくらさんだったと思います。彼女を脇で支えるサイドストーリー的な立ち位置にいたのが栗原さんと村上さんだったので、そう理解して受け止めるまでにちょっと戸惑いがあったのは事実です。
さくらさん、舞台でのお芝居はこれがほぼ初めてとは思えないほどの熱演で、主役としての輝きやオーラも感じられました。とても素晴らしかった。
それだけに、最初に「栗原さんと村上さんがメインの作品」と銘打っていたものは何だったんだろう…という物足りない気持ちも正直湧いてきてしまいました。
ストーリーの中で栗さんや村上さんがメインになってくる展開ももちろんあったけど、物語の主題としては取り上げられていなかったと思います。あくまでもサイドストーリーとしてのエピソードといった印象が私には強かった。
もしかしたら、脚本を書いていくなかで大野さんが武蔵野真里に大きく感情移入する気持ちが芽生えたのかもしれないなぁ…とちょっと思ったかも。
最初から、さくらさんの存在感をもっと大きく出して宣伝打ってくれていれば、もっと素直にストーリーを観ることができたのかもしれません。あくまでも個人的な感情ですが。
真里のエピソードが全体的に濃く描かれていたのに対し、壬生や小山のドラマが少しアッサリに感じたのも少し残念だった。真里が主人公だったら全然アリな展開だったと思うんですが、栗さんと村上さんが主役として見ていくとどうしても中途半端な部分は否めなかったかなぁと。
特に、壬生さんのエピソードはもう少し掘り下げてほしかった。彼がなぜ「適当にやってればいいよ」って色んなことを諦めてしまうような性格になってしまったのか、個人的にはもっと深いドラマを期待しただけに拍子抜けしちゃったんですよね(汗)。
最初の頃はすごく熱心に町の人たちと関わって番組作りしていたのに、いつのまにかその気持ちをどこかに置き忘れてしまったと。そこの明確な理由のドラマがもっとほしかった。最初の熱意が持続できないような心に打撃を与えたようなことが壬生の中にあったと思うんだよなぁ。
「時の流れや立場がそうさせた」っていうのは自然な流れかもしれないけど、主役のエピソードとしてはドラマが薄い。町の人とのかかわりを避けがちだった割には、会えばすんなりと打ち解けた雰囲気になってたし・・・そこはすごい違和感あったかも。
あと、いつもスマホばかり見ていた理由っていうのも…「家族の時間が取れなくなって娘から既読無視されるようになったから」というのもちょっと弱い。
その和解のきっかけも、テレビ中継を見た娘から「パパ、見切れてる」ってコメントが入ったという簡単な感じだったのも少し残念だったかなぁ。クスっとできる可愛いシーンだったけど、これだけで片付けちゃうことに物足りなさを感じてしまいました。”壬生が主役”だと思ってたのでなおさらそう思ったのかも…。
真里の影響を受けて再び熱意を取り戻していく、という展開に最終的に持って行く流れなのだから、個人的にはもっと壬生のトラウマ部分を深く描いてほしかったです。
舞台の場数を多く踏んでる栗原さんならば絶対そこのドラマは印象的に演じてくれたはず。栗原さんのお芝居の実力を知っていただけに、非常に勿体なかったなぁというのが正直なところでした。
ただ、栗さんはこの時期、次の舞台作品のためのお稽古真っただ中でもありましたから…そういうことも多少は配慮されたのかもしれないなとも思います。
もう一つ大きな違和感を持ってしまったのが、小山と父親の場面に関してです。
実は高椅神社の一人息子だった小山は、自分のやりたかったことを優先するために神社を継がずに東京へ出て行ってしまった。その後戻ってきてケーブルテレビ局『とちラブ』で働いているわけですが、そのことがきっかけで親子の仲はギクシャクしたものになってしまっていたようです。
真里から「なぜ高椅神社の取材に消極的なのか」と尋ねられたときに「それは…」と答えづらくしていた場面もあったので、彼の中でその一件が心の闇として気持ちの中に残っているんだろうなと感じました。
そこのドラマは分かりやすかったし、小山のエピソードとしてしっかりしたものだと思って見てました。まぁ、ちょっと強引な展開かもとも感じましたが(汗)小山市出身の村上さんの見せ場として盛り上がるところではありました。
が、視覚的な部分として違和感があったんですよね…。というのも、小山の父親である高椅神社の宮司を演じたのが高木さんだったからというのがあって…。
誤解されたくないのは、演じた高木さんは本当に素晴らしかったし驚愕させられることも多かったということ。高木さん個人が問題なのでは決してなく、どちらかというと見せ方の演出的な部分で違和感を感じたんです。
高木さんは今回の舞台で一人6役以上を演じる大活躍でした。小山の町の人は高木さんが全て担当していて、特に同じシーンで多数の役柄を声だけで演じ分けていたのは本当にすごいと思いました。
が、どの人物もどちらかというとコミカルな雰囲気があって。人物を分けることから役名の入った色分けされたベストを装着し、見た目がもう面白すぎて何度も吹き出しちゃうくらいだったんです。人物変わるたびにベストの”役名を隠していた布”が剥がされていくのも笑えたしww。
なので、高木さんはこの作品の中ではどちらかというと「笑いの部分を担当」的な立ち位置だなっていう視点で見てました。じゃなければあのベストは着ないと思ったし(笑)。
真面目っぽい町の人たちのシーンになっても、高木さんが演じていることでどこかクスっとしちゃうような雰囲気がありました。
だからこそ、小山の父親役は違う人に演じてほしかったという想いがすごく強い。
小山と父親の関係はけっこうシリアスなパートで、特に最後に二人が和解の雰囲気になるところは感動する流れだったんです。が、そこに同時に”町の人たち”も存在することになってて…高木さん、脇に小山の父親に変身するための”神主の烏帽子”アイテムを挟んだまま登場してるんですよ(苦笑)。その見た目がかなり滑稽で、宮司姿の父親に変身した時には思わず吹き出しそうになってしまったくらいだったw。
町の人ならば雰囲気的に可笑しみがあっても許せるんですが、さすがに小山と父親の一番肝となる大事な感動シーンであれはないんじゃないかなって思ってしまいました…。あの場面は笑いたくなかったし、素直にもっと感動したかった…。
小山の父親って、他の町の人たちとは立ち位置がちょっと違うと思ったんですよね。そこの色分けだけはキッチリしてほしかった気がするんですよ。なんなら、大野さんが父親役を演じてもよかったんじゃないのかなって今でも思ってます。
これはあくまでも「見た目」の演出の部分に関する私個人の見解なので、高木さんに対しては何も悪意がありません。むしろ、声色だけであれだけの人数を演じることはすごいと感動してます。
おそらく、ここの場面はラジオの方が感動できるんじゃないかなと。声だけの方が小山と父親のシーンに関しては臨場感があるような気がしました。
全体的にはとても素敵な物語だったし、小山市への愛が詰まった良い作品だなと思います。でも、全てが素晴らしかったという感想にはどうしても至らない部分はあったので、少しここで告白させてもらいました。
村上新悟さんについて
出演者の皆さん本当に芝居が魅力的で素晴らしかったのですが、当ブログは村上さん中心に展開してますのでw、今回は村上さんの舞台について感じたことを記したいと思います。
最初にも書いたように、村上さんの舞台に立っている姿をこれまで見たことがなかったので、観る前からとても楽しみにしていました。
と同時に、ちょっとドキドキもしたかもw。テレビの芝居とは違った村上さんのお芝居…どんな感じなのか、どんな感想を持つのか、自分でもあまり予想がつかなかったんですよね。
まず第一声で驚いたのが、声の張りの良さと自然に世界観に溶け込んでいた雰囲気です。舞台に不慣れな人のお芝居だと、声や存在感が浮いているように見えてしまうこともけっこうあるのですが、村上さんには一切そういうことは感じることがなかったです。
しっかりとしたセリフの語り口調はドラマでもそうでしたが、舞台だとさらに一段と映える。滑舌も良いので言葉の内容も聴き取りやすい。それに、いい具合に体全体がリラックスしていて動きも自然でとてもスムーズに見えました。
私は2回目の回を観たのでちょっと小慣れていたこともあったのかもしれませんが、「村上さんはやっぱり舞台俳優なんだな」ってすごい実感した。舞台の上の世界がとても居心地が良さそうにしているように思えたし、何より生き生きしてたんですよね。テレビの芝居ではこれまで感じたことがなかったような雰囲気がそこにありました。
新しい村上さんの一面が見れた気がして、ファンとしてとても嬉しかったです。
村上さんが演じた小山の場面でツボった点をいくつか。
まず、真里との関係の変化ですかね。
真里への最初の対応はかなり冷淡でツッケンドンw。さらには「アナウンサーとして来たのに裏方もやらされるなんて」とボヤく彼女に容赦なく厳しく接していたりして二人の間は最初はものすごくギクシャクしたものになってました。真里がバーのマスターに”ホの字”となったのをきっかけに(高木さんのマスターがすごい笑えたんだけどw)やる気を出し始めても小山の指導はスパルタ級。
小山にドヤされながら真里が中央マイクで客席に合間を縫って解説するシーンで、「お前いったい誰に向かって話してんだよ!!」とごもっともな強烈ツッコミを入れるのは特に笑えたww。ここのさくらさんとの台詞の掛け合いがスムーズでとても面白かったです。
本当は熱血的な一面を見せながらも、会社では壬生に影響されてか”適当男”になっちゃう小山でしたがww、真里が慣れない編集作業を必死にやっている姿を見てついに我慢できなくて手伝ってしまいます。見てられなくなってウズウズしちゃった小山の表情が可愛くてツボだったw。
で、この時の小山のパソコンのプログラムを打つタイピングの速さが尋常じゃないwww。どんなブラインドタッチしたらあんな高速打ち込みできんだよっ!!とツッコミ入れたくなるくらいの手さばきでww、しかもそれをシレっとした表情でやるもんだから思わず爆笑(笑)。
この一件がきっかけで、小山は壬生よりも早く真里に影響を受けて仕事に前向きになっていきます。PRする高椅神社が『コイ(鯉)の明神様』だと説明するくだりが出てきた時には・・・予感したよね、真里とのコイバナを(笑)。いやだって、最初雰囲気悪かった2人があるきっかけで急に関係が深まる…的なのって恋愛ドラマにありがちな展開じゃないですかww。
小山と真里が一緒に取材に行くシーンも最初とは違って良い雰囲気になってるように見えたし、これは初めて村上さんが『恋』する瞬間の芝居が見れるんじゃないか!?的に期待しちまった(笑)。
ですが・・・そうなりそうでならなかった(苦笑)。結局は尊敬する上司というところで止まってしまったのが個人的に残念でしたw。まぁ、今回のストーリーはそういう視点で描かれてなかったからな。
栗原さんが演じる壬生との息の合ったセリフの掛け合いも面白かったです。
特に最初の制作会議のシーンでの真里のアイディアに対する反応は笑えた。一つ案が出てくると小山がすかさず「でもそれは」みたいな意見を出して、それを受けてすぐに壬生が「却下」を出す。この時の村上さんと栗原さんの台詞の呼吸がバッチリ噛みあっていてテンポある面白いシーンになっていました。
その他の栗原さんと一緒の場面でも、村上さんは実にスムーズにセリフを発してて。どんな芝居やセリフでも栗原さんなら受け止めてくれるっていう絶対的な信頼感があったんじゃないのかなと思いました。
ただ、二人のシーンになった時の芝居を比較してしまうと・・・舞台での場数を多く踏んでいる栗原さんの安定感が圧倒的に際立っているのは感じました。村上さんは舞台で芝居をするのはすごい久しぶり(7年ぶりくらいらしい)だったこともあってか、台詞に感情をうまく乗せきれてないなぁと思うこともチョイチョイ…正直ありましたね。そこは少し残念に思ったんですが、今後舞台経験を重ねることができたら勘も戻るだろうし改善されるんじゃないかなぁと。
一番グッときたのが、小山がイベント前の生放送番組の中で故郷への想いを語るシーンです。
最初の段取りでは高木さんが演じる町の人(たしか粂川さんだったかな)が挨拶をする手筈になっていたのですが、小山の故郷に対する隠された気持ちを察した真里が急きょ彼にその役目を任すことになります。
意気揚々とカメラの前に立とうとした粂川さんが「え!?」って感じで動揺しまくってた姿は可愛くて笑えたけど、あんな間際はちょっと可哀想だったかなとw。でも、シーンの流れから言えばやはりそこは小山のコメントを!ってことになるよね。
急に振られた小山は激しく動揺するのですが、真里に背中を押されるように集まったオーディエンスの前に出て自分の素直な「小山市」に対する気持ちを語る。で、この時に小山は意を決したように持っていた台本を静かに閉じて”自らの言葉”で話すんですよね…。
その一言一言に、小山という役を通した「村上新悟の想い」をひしひしと感じてしまったのはきっと私だけではなかったと思います。
小山は高椅神社の跡取り息子でありながら、自分のやりたいことを追及して親の期待を裏切って一度は故郷を離れました。でも、また再び故郷へ戻り地域密着型の番組を制作するケーブルテレビで働いている。
離れた時期があったからこそ感じる、故郷の優しさや温かさ…。「その場所に帰る家がある」といったような言葉を発していたのがものすごく印象に残りました。
あのコメントは、セリフとしてではなくて村上さん本人の心から滲み出たものに私には聞こえた。村上さんじゃなければあの言葉は出てこないんじゃないかな。
この場面、ボロボロと涙を流しながら一つ一つの言葉を愛しそうに大切そうに語ってて・・・見ていて私ももらい泣きしそうになりました(涙)。あんな号泣してる姿見たの、初めてかもしれない…。
村上さんも役者を目指し、成功するまでは帰らないという固い決意で故郷を出たってどこかで聞いたことがあるので、よけい重なるものがあったんじゃないかな。たとえ離れていても…辛かったことや楽しかったことひっくるめて、「小山市」での時間は村上さんにとってかけがえのない大切な宝物なんだろうなって改めて思いました。
最後にオーディエンスに向かって「楽しい場所なので皆さん遊びに来てください!」って呼びかけるセリフがあって。ここでは必死に笑顔作ろうとしてたんだけど涙止まらず状態になってたなぁ。自分の気持ちとものすごくリンクしてるんだろうなって思いました。
次のシーンに行くために少しの間客席に背を向けて一所懸命涙をぬぐっていた姿が切なくて、とても愛しく感じました。何とか涙は止まっても、最後のシーンの直前くらいまで鼻をすすってたのが印象的だったな。
この場面をあえて入れた大野さん、ありがとうって思いましたよ。村上さんへの愛があってこそのワンシーンだと感じたので。
舞台はこの後大団円でラストシーンとなりましたが、もしも続編があったとしたら・・・小山と真里は一歩進んだ関係になっているような気がしますw。だって真里さん、バーのマスターに告白する前に振られちゃいましたから。あれはその後の展開への前振りって個人的には捉えましたぞww。
「小山博の唄」では一節歌ってましたが、前述したように音程はかなり怪しかったww。あ、村上さん、ミュージカルの話は厳しいなって思いました(苦笑)。まぁ、でも、ミュージカルでもソロで歌わない役っていうのもよくあるので、もしもそういう機会が来たらチャレンジしてほしいです。
でもあの♪こい、こい、こい、恋ロード~♪っていう歌声はめっちゃ記憶に残ったなw。