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『西郷どん』最終回感想 敬天愛人

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その日の夕刻、大久保は「戦が終わった」とだけ告げて呆然としながら家に戻る。満須から「吉之助さぁはどうなったのですか?」と聞かれると、吹き出してくる感情に飲み込まれていく大久保…。

その場に崩れ落ちた大久保は、まるでうなされたように「吉之助さぁ」とその名を呟く。二度呟いたあと、彼の中でどんどんその存在が大きくなっていき・・・やがてそれは悲痛な叫び声へと変わっていきました(号泣)。

「吉之助さぁーーーー!!!!」

何度もその名を叫び、張り裂けんばかりに慟哭する大久保の姿は涙なしに見ることはできなかった(涙)。いったいこれまでどんだけ西郷への想いを封じ込めてきていたのだろう…。

引き留めたくても引き留めることができず別れたあの日からずっと、どんなに冷酷に振舞ってきていても彼の中で「西郷吉之助」の存在を消すことはついにできなかった。それどころか、討伐令を出した後から西郷に対する想いは日に日に増していったのではないだろうか…。

大久保にとって西郷は、嫉妬の対象でもあり、ライバルでもあり・・・そしてそれ以上に、かけがえのない親友だったのです(涙)。

どんなに泣き叫んでも、もう大切な、絶対に失いたくなかった人は戻ってこない・・・。その引き金を引いてしまったのは大久保自身だったというのが本当に切なくて仕方なかったです(涙)。

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京都市長となった菊次郎は、西郷が書いた『敬天愛人』の書を眺めながら

「父は、天を敬い、人を愛しました。己の身を捨てても精一杯人を愛しました。だからこそ、これほどまでに多くの人々から愛されたのだと思います」

と語ります。父と過ごした時間は短かったけれど、菊次郎はそのなかでも目いっぱいの愛情を感じて育ったんだろうなと思いました。

西郷が亡くなったことは、彼と関わってきた多くの人の知るところとなります。

ヒー様こと徳川慶喜は「なぜ俺のように逃げなかったのか」と悔しそうに呟く。

ちょうどその時にキャンバスに向かって描いていたのは「牛」の絵。ヒー様はいつも西郷のことを「牛男」と呼んで慕ってたからね…。でもこの時の「牛男」ほど悲しい響きはなかったよ…。
そういえば、ふきさん結局ヒー様のところに戻ってたみたいですね。まぁ彼女は架空の人物なのでどうとでも描けますが。

町人たちは空に輝く赤い火星を見ながら「あれが西郷星だ」と言って手を合わせていました。

酒屋の2階には西郷を偲ぶように勝海舟が一人牛鍋を前に座っている。

「とうとう星になっちまったかい。西郷どん、先に龍馬とよろしくやっててくんな」

この言葉が実に味わい深くてジーーンときました(涙)。

奄美大島では愛加那が「西郷星」を眺め、愛した人を想いながら別れの歌を口ずさんでいました。

政府側について兄と敵対する立場となってしまっていた従道は、西郷一家を迎えるために建てた家の中でウナギを食べながら涙する…。「兄さぁとウナギ獲りがしたかった」という弟の願いを叶えようと、みんなで川に飛び込んで子供みたいにウナギを追い回していたあの頃が懐かしいよ(涙)。ウナギの味は従道にとって兄との思い出そのものですからね…。

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時が過ぎ、菊次郎は無くなった片足に義足を付け、自らの足で新しい一歩を踏み出していました。そんな様子を温かく見守る西郷家の面々。この平和な光景は、西郷が命をかけて実現させたものなんだよなぁと思うとちょっと切なくもありました…。

その日の午後、糸は家族を集めて最後に西郷と話したことについて語ります。

延岡での別れの夜、西郷は「これからの国造りは、おはんらに託されちょう」と糸に告げました。自分が死んでしまっても「ダメなものはダメだ」とはっきり意見を言える大人になってほしいと子供たちへの遺言を残していた西郷。その気持ちだけはなんとしても伝えたかったんだろうね…。

真剣に話を聞き入る子供たち。「逆賊・西郷隆盛の子であることを恥じることはありもはん!」と糸はキッパリと言い放つ。でも、彼女が改めて言わなくても子供たちは父親を誇りに思う気持ちに全く揺らぎはなかったようですね。

これに対して寅太郎が「父上は西郷星になったと云われてみんなから拝まれている」と話すと、「それは違う」と否定する糸。

「ダンナさぁは人に見上げられたり拝まれたりして、喜ぶようなお方ではありもはん。いつも低いところで弱い者に寄り添って、あちこち走りまわっちょった。誰よりも、心が熱く、太か男でした」

これが、第1話の冒頭の上野の銅像除幕式の時に糸が

「こげな人じゃなか!!」と言っていた答えになると思います。

つまり、西郷は人々を上から見下ろしたり拝まれたりする対象ではなく、いつも庶民と同じ目線でいた人であるということ。あんな高い位置にいるような人ではない、という意味で糸さんは「こんな人じゃない」と言っていたという解釈ではないかと。

糸さんの「違う」発言には諸説あって、「あんな軽装で外に出て行くような人ではなかった」という話もあります。本来はこちらの意味だったかもしれませんが、このドラマでは「高いところから見下ろすような人じゃない」っていう解釈でよかったと思います。

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そしてもう一つの運命の日、明治11年(1878年)5月14日が訪れる。

明治天皇への謁見のために赤坂へ向かうと話す大久保に、岩倉は「団十郎が西郷を演じているから見に行かないか」と誘う。それを聞いて少し微笑んだ後に「いずれ」とだけ答えて出かけていきました。もしもこの芝居を大久保が見ることができたなら…感極まって泣いてしまったかもしれないよなぁ…。

紀尾井坂に差し掛かったあたりの時、大久保は時計を取り出そうとしたときに胸ポケットに入っていた一枚の紙切れに気が付いてそれを広げようとする。と、その時馬車が急停止し、窓には不審な男が近づき「斬奸状」と書かれた書状を叩きつけてくる。

馬車から引きずりおろされた大久保は「無礼者!」と威嚇しますが、数人に囲まれあっという間に刃の嵐を浴びせかけられる…。何度も斬りつけられ、息も絶え絶えになった大久保を確認すると下手人たちはは退散。

「おいは・・・まだ、死ねんど・・・・やらねばいかんこっがある・・・まだ・・・」

そう呟きながら、手に握っていたのは・・・

「cangoxina」の包み紙でした(涙)。

大久保にとってそれは、西郷そのものだった…。ずっと、身に着けていたんだね…。きっと、それがあったからこそ西郷泣き後も大久保は前に進むことができていたのかもしれない。

大久保に突きだされた斬奸状の内容は以下の5か条だったそうです。
その一、議会を開かず、独裁政治を行った罪
その二、法を乱用して私利私欲を行った罪
その三、必要のない工事などで国費を無駄遣いした罪
その四、士族を強引に排除して内乱を起した罪
その五、外交に失敗して国力を弱めた罪

徐々に力を失いその手から包み紙が飛び立った時、大久保は静かに目を閉じる…

一筋の涙を流し、徐々に消えゆく大久保の命…(涙)。その死の直前、彼の耳元に聞こえてきたのは…

「忘れ物した…!大久保正助を忘れてきた…!!!」

という西郷吉之助の声でした。

「いっど!!!!」

あの、初めて二人揃って薩摩を飛び出していった第13回のラストをここで持ってくるとはーーーー(号泣)!!!!この「変わらない友」のラストシーンは本当に感動して号泣しながら見ていたのですが、最終回に、しかも、大久保が倒れたその後に再登場させてくるとは・・・この演出はズルい!もう、タオルが絞れるくらいに泣いた(涙)。

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このシーンを見た時、吉之助は正助を迎えに来たんだなって思ったんだけど、同時に、大久保はやはり西郷のいない世界では生きられない運命にあったんだなとも思いました。西郷の心の中にいつも大久保がいたのと同じように、大久保の心の中にもいつも西郷がいたのです。

二人は切っても切り離せない、かけがえのない親友・・・心友だったんだなぁと・・・。それは最後に出てきたオープニングでの回想場面を見ながらも強く思いましたね。

大久保を襲った不平士族は6名。彼らは大久保を襲う前に馬車の馬と御者の命も奪っています。鹿児島に建つ大久保の銅像の後ろには小さく犠牲となった馬と御者の像も彫られてますし、青山の大久保の墓の隣に墓石も建てられているそうです。

大久保の殺され方はそれはそれは無残だったそうなので…せめてドラマの中では、最期の瞬間だけでもホッとする瞬間があったと思いたいです…。

ちなみに、実際に大久保も殺害されたときに懐に西郷からの手紙を偲ばせていたのだそうです。それは、大久保が岩倉使節団として外遊した時に西郷に送った手紙に同封した髭付きの写真についての返信だったのだとか。「その髭は似合わないからやめた方がいい」という内容の手紙を肌身離さず持っていたのかと思うと…それだけでも泣けて仕方ないですね(涙)。

今回、瑛太くんの大久保を見てこれまで抱いていた「大久保利通」のイメージが変わったような気がします。自分の信念のために鬼になった大久保。でもそこには彼の複雑な感情がいつも混在していて、決して一筋縄では語れない人だったんだなということがよく分かった。
どんなに冷たく突き放そうとしても、心の中から西郷への思慕の念を消し去ることができなかった大久保の哀しさを、瑛太くんは実に見事に演じ切ってくれました。

孤独な大久保の気持ちがリンクしたからか、撮影中もほとんど他のキャストと絡まずに役を深めていったとトークショーで語っていたことを思い出します。「あさイチ」で華丸さんは「大久保憎し!」って言ってたけど、私は一度も瑛太くんが演じる大久保を憎いと思ったことはなかった。
それくらい魅力的な芝居をこの1年間魅せてくれた瑛太くん、ありがとう!!瑛太くんが大久保でよかったと思うし、お墓の下で大久保さんも納得してくれたと思います。

西郷と大久保の二人のシーンが集約された回想シーンと共に流れるオープニングテーマ。これを見て、改めて今回の大河ドラマは「西郷と大久保の物語」だったんだなと実感させられるものがありました。

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で、ここで終わるのかと思っていたら…最後の最後に、城山の戦いで倒れた西郷のその後の場面が出てきた…!

銃弾が止んだ後、瀕死の状態の西郷は一人地面の上を必死に這いつくばっている。そして、仰向けになって倒れ込んだ時・・・その目には清々しい朝の青空が広がっていました。命が尽きる寸前に見えた青空の色に安堵したかのように笑みを浮かべる西郷。

「もう・・・ここらでよか・・・」

そう言って静かに、永遠に目を閉じた西郷。その最期の姿を桜島が優しく見守っているかのようだった・・・。

こうして、大河ドラマ『西郷どん』は完結しました。

このラストを見た時に、一番最初に思ったのは・・・「物議をかもしちゃうだろうなぁ」ってことでした(苦笑)。というのも、通説では、西郷隆盛は足と腹を撃たれた後に死を覚悟し、別府晋介に介錯を頼んで自刃したとされているからです。「晋どん、ここらでもうよか」というのが最期の言葉とされています。

前回西郷が主役となった大河『翔ぶが如く』でも別府晋介に介錯されて命を散らすシーンが出てきました。あの時は西郷さんの首が落ちるところまで映し出されていて大きなショックを受けたんだよなぁ(汗)。

その通説を今回全く無視した形のラストにしましたから、正直なところ、あの、撃たれて暗転したところで終わらせておけばよかったのにな…とも思いました。
今回のドラマだと西郷は撃たれた傷で亡くなったという描写になっていますから、「死を覚悟して命を絶った」という通説の西郷の姿とは全く違う印象になります。

おそらく、実際の西郷は通説通り自刃のうえ介錯されて果てたと思います。介錯については最近は別府晋介ではなく桐野利秋だったのではないかという説も出てきているそうなのではっきりは分かりませんが、ドラマと同じような亡くなり方はしなかったんじゃないかなと。

ただ、時間を置いて考えてみたら・・・今回の大河ドラマ『西郷どん』の終わり方としてはあれでよかったんじゃないかと思えるようになりました。

そもそも、「ドラマ」ですから。史実を織り交ぜたフィクションなのでね。
もともと糸が西郷と幼馴染だったという設定からして超フィクションでしたから(笑)、いまさら「史実」云々にこだわるのも違うなぁっていう想いもありまして。
ただ、西郷が介錯されずに撃たれて死んでしまったことで、別府くんの最期の様子が描かれなかったことだけは可哀想だったなとは思いましたが…。

鈴木亮平くんがブログの中で、最後に見上げた空の色を見ての感想を語っていたのを読んで・・・これでよかったんだって今では思ってますよ。

今週の鈴木亮平くんのブログ

鈴木亮平『敬天愛人(西郷どんこぼれ話47)』
終わってしまいました。何というか、今は放心状態です。西郷吉之助様。城山でその命が尽きる時、あなたの胸を満たしていたのはどんな思いだったんでしょうか。当人以外に…

今回、見事に大河ドラマの主役として西郷隆盛(吉之助)を生き抜いた鈴木亮平くん。ドラマの回を追うごとに、彼が西郷とリンクしていくのをすごく肌で感じました。特に後半は、亮平くんの芝居を見ているのか、亮平くんに降臨している西郷隆盛を見ているのか分からなくなるくらいリアルだった。

前からすごく真摯に役に取り組むし、体重も役に合わせて変えることができるすごい役者さんだなぁって思ってたけど、今回の西郷役を見て・・・それ以上の、何かこれまでのすべてを超越するようなすごい瞬間を目の当たりにしたかのような気持ちにさせられてしまいました。

鈴木亮平くん、あなたはたしかに「西郷どん」と呼ぶにふさわしい人でした。「西郷どん」は鈴木亮平くんそのものだったと思う。本当に1年以上、おやっとさぁでした!!素晴らしい西郷をありがとう!!!

これにて、なんとか各話感想は終了。ちょいちょい抜けてるところがありますが(第13話を書けなかったことはちょっと悔いが残る)、約1年間、どっぷり浸かって楽しんで見ることができました。評価については割れることも多かったし、複雑な気持ちにさせられることもあったけど・・・私は『西郷どん』大好きでした。ブルーレイも買ってるしw。

最後に、次の記事でもう一度だけ「個人的ベストシーン」をいくつか挙げて終わらせようと思います。よろしければお付き合いください。

どれだけの人に読まれるかは分かりませんが(汗)、目にしてくださった皆様、ありがとうございました。

🎀「西郷どん」ブルーレイ第四集(36~最終47話まで)

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