2025年度のNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』。大河としては珍しく江戸時代中期が中心となった物語。
最初にこのテーマを知った時は”江戸中期はあまり大きな戦や事件の印象がないからストーリーとして楽しめるかな”といった不安が少しありました。『水戸黄門』とか好きで毎週見てたけど、あれはお決まりのルーティーンもあったし安心して見ていられる定番の癒し時代劇みたいな存在だと思ってて。大河ドラマ枠で江戸の町人たちの話となるとちょっと薄いかなぁといった懸念があったんですよね。
ただ、主演は役者として非常に魅力的な若手俳優の横浜流星くんだし、脚本は2017年大河ドラマ『おんな城主直虎』で見事に惹きつけられた森下佳子さん!!これは期待して良いのかもと。不安と期待どちらが大きかったかと言えば、期待の方が大きくなりましたね。
そしていざ始まったわけですが・・・
”べらぼう”に面白すぎる!!!!
第1回目から非常にテンポが良くキャラクターも魅力的、まるで面白い漫画を読んでいるかのような爽快感。どこをとっても私好みのてんこ盛りで、1回目観終わってから「これはディスク購入決定だ」と思ったほどでした(笑)。
ひと昔前のNHKではメインとして描けなかったであろう”吉原”に真摯に切り込んでいるのも良い。実際の吉原は『べらぼう』の世界よりも過酷だったとは思うけれど、あの場所で生きた人々の喜怒哀楽がドラマチックに繊細に描かれているので毎回深く胸を打たれながら見ていました。さらにそこに江戸時代の”本屋事情”や”政治の駆け引き”も絡めて描かれていて非常に興味深く面白い。森下さん、素晴らしいなと毎回心の中で拍手しまくり。
もっと早くから感想ブログ書こうと思っていたのですが、なんだかんだで出遅れまくり・・・気が付けば第1部が終了(汗汗)。第2部から書こうとは思っていたのですが、第1部も見所満載だったので駆け足ながら数回に分けてちょいちょい振り返ってみたいと思います。
第1回「ありがた山の寒がらす」
始まりは、1772年(明和九年・・・”めいわく”ねん)2月末に起こった明和の大火。今でいう目黒駅あたりから浅草、吉原まで火が燃え広がって大きな被害が出たとされる大火事からスタート。この事件は実際に起こった出来事のようで「目黒行人坂家事絵巻」として残っているそう。
【大河べらぼう】作者・森下佳子さんインタビュー
第1回放送を前にドラマに込めた想いなどを伺いました。「江戸時代は金・見栄・承認欲求の戦があった」「蔦重、生き抜いて!と思いながら書いています」「横浜流星さんのパワフルなお芝居が楽しみ」 #大河べらぼう #横浜流星 https://t.co/i0HNlwOskm— 美術展ナビ (@art_ex_japan) December 31, 2024
この火事の映像が非常にスリリングで、横浜流星くん演じる蔦谷重三郎(通称・蔦重または重三)の活躍っぷりが目を惹きました。ここで小芝風花さん演じる花の井、渡邉斗翔くん演じる謎の少年・唐丸との絡みや出会いを出してくるところが巧い。
そしてなんといっても驚きなのが、火事から救われた九郎助稲荷(くろすけいなり)が突然、ドラマで語りを担当している綾瀬はるかさんとして登場したこと。
【大河べらぼう】語りの綾瀬はるかさん、「九郎助稲荷」役でも出演
花魁など人の姿に化けては江戸の街に出没します。こちらもお楽しみに。 #大河べらぼう #綾瀬はるか https://t.co/rDBVLaPibz pic.twitter.com/hYeW1xPtZw— 美術展ナビ (@art_ex_japan) January 5, 2025
どこかで出てくるのではと思っていたけど、まさかあんなに早く登場するとは思わなくてビックリしましたww。めっちゃ可愛かったですね。
物語の舞台となるのは幕府が唯一公認した”色里”・吉原。初回当時は24歳だった蔦重は五十間にある茶屋(吉原の案内所)で働いています。この店の主は蔦重の中村蒼君が演じる義理の兄・次郎兵衛なのですが、ま~ったく働く気がなさげなのらりくらりした遊び人風w。それなのに何故かめっちゃ可愛い不思議w。
【あす】横浜流星の大河ドラマがスタート! 「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」第1回「ありがた山の寒がらす」のあらすじ 1月5日放送
大火をくぐり抜け、吉原で苦しむ女たちの姿に心痛めた蔦屋重三郎は……。初回は15分拡大版です。 #大河べらぼう #横浜流星 https://t.co/FTpQuNbuEF pic.twitter.com/LqLYA9AiyD— 美術展ナビ (@art_ex_japan) January 4, 2025
蔦重は茶屋の仕事のほかに副業として”貸本”業も営んでいて、吉原の女郎さんたちのために出張で訪れることもしていました。当時本は”買う”のではなく”貸出”が主流でした。このシーンの時から蔦重が彼女たちを大切に想っている雰囲気が伝わってきてホッコリ…。
吉原の女郎屋は立派なお店もあれば安くてお客さんも少ない粗末なお店(河岸)もありました。吉原の中にも格差社会ができていたのはこの大河で初めて知った。花の井たちとは違い、質素な食事をすする女郎さんたちのシーンは何とも心が痛い…。蔦重はそんな彼女たちの元にも本を貸しにやって来ていました。きっと商売度外視の気持ちで行ってたんじゃないかなと。
そこに居たのが、愛希れいかさん演じる朝顔。蔦重は幼くして天涯孤独となり、拾われた駿河屋で辛い目に遭っていたところを幼い花の井を連れた朝顔に救ってもらった恩があります。立ち上がれないほど体を壊している彼女の姿に胸が痛む…。吉原の女郎の哀しい現実を朝顔さんが体現しているようで辛い。
茶屋では一つの出会いが。蔦重の茶屋にガラの悪い吉原初心者の若者たちが襲来。刀を預けるように言うと逆切れしてボコられる蔦重(汗)。こういうのも正面から描いてることに驚いた。いまドラマはコンプラとか厳しいですからね。でも蔦重はボコられても慣れっこみたいでさしてダメージ受けてない。このキャラがこのドラマの凄く面白いところだと思って私は好意的に見てます。
で、このゴロツキ仲間のなかにいたキザ男。それがのちの長谷川平蔵っていうんだから驚きww。平蔵を演じてる中村隼人くんは数年前に舞台『巌流島』で流星くんとがっつり共演してたんですが、それとは全く違う関係性になってて面白い。
夜になると賑やかになる吉原。ぷらぷら遊びに来た平蔵一味wはちょうど客の指名を受けた花の井の花魁道中と出くわす。花の井役の小芝風花さんの見事な外八文字の歩きっぷり!!そして艶っぽさ!!あれは平蔵が一目惚れするのも無理はないっ(しかも怪しく微笑まれちゃなおさらww)。この時の隼人くんの表情がめっちゃ可愛かったww。
平蔵が「花の井と一席持ちたい」と松葉屋に因縁つけてると、こりゃ大物だと目を付けた蔦重がすかさずやって来て「彼女とは幼馴染だから任せて」とうまく丸め込むw。このとき蔦重が歌舞伎ポーズしてたけど、流星くんはあの動きをかなりこだわりを持って演じたそうですね。目の前に本物の歌舞伎役者である中村隼人くんいますからなおさら気合入ってたのかもw。
そしてあの河岸の女郎屋で病を患っていた朝顔姐さんに悲劇が訪れる…。あのシーンはホント哀しかった。演出もリアルだった(かなり思い切った見せ方してた)のでなおさら悲しみが深かったですね。あのようなことが日常茶飯事に起こっていたのだと、改めて吉原での生活の過酷さを思い知った場面でもありました。蔦重が朝顔の顔を見つめながら「こんな酷ぇ話あっかよ…」と涙するシーンは特に泣けた。吉原で育った彼は女郎として生きなければならない女性たちの痛みを感じながら生きてるんだなと…。
忘八たちの会合。まぁ血も涙もないようなドス黒い人たちが集まってましたわ(汗)。この会合が後々オモロイ会合へと変化していくことなどこの時は考えもしませんでしたよw。伊藤淳史くんが演じる大文字屋は特に鼻息が荒い。彼のこんな役を見るのは初めてだったのでとても新鮮。のちのち大文字屋は蔦重から「カボチャのおやじ様」と呼ばれるようになりますが、その由来がこの時語られてますねw。大文字屋は女郎にカボチャを食べさせて大きくなったからな、と言われてるw。
そこに我慢の限界と現れたのが蔦重。河岸にいる女郎たちの惨状を必死に訴えるも、それを語る相手は人間の八つの徳を忘れた”忘八”と呼ばれる女郎屋の主人たち。全く聞く耳を持たずそこに心を寄せる素振りすらない。大文字屋の台詞なんか本当に”外道”以外の何物でもない。あれを大河で言わせる脚本、すごいと思った。蔦重の熱い訴えは育ての親である高橋克実さん演じる駿河屋の怒りを買うだけで。しょっぱなからボコ&階段落とされる蔦重、すごっ!!もうコンプラとか恐れてない大河だなと思った。蔦重も階段から突き落とされたのにギラギラした目をしていて全く負けてないのもいい。これぞ江戸っ子というところでしょう。
忘八への怒りが収まらない蔦重が共同で使われる厠(今でいうところの公衆トイレ)でもうひとつの出会いが。まさかあの人物の登場が”厠”とはww。しかもOPクレジットが「厠の男」ですからねw。しかものっけからの台詞がここには書けないワードてんこ盛り(笑)。それを嫌味なく痛快にセリフに乗せられる役者・安田顕さん!!!あぁ、これはヤスケンさんにしかできないキャラかもしれないとあのシーン見て思いましたよ。
手洗い場で”厠の男”は蔦重にさら~~っと老中・田沼意次の名前を出してくる。しかも気軽に会ってるかのような口ぶり。あんな話聞いたら蔦重が「田沼様に自分も会えちゃったりするのかも!?」と希望を抱くのも仕方ないよなって思いました(笑)。
そしてウマ~~いこと田沼に謁見しにやって来た和泉屋の荷物持ちになった蔦重(吉原という名前を出されて動揺してた和泉屋は断れなかったってことよねww)。賢いよね~。そしてついに老中と会えてしまうのが凄い。
【大河べらぼう】田沼意次役の渡辺謙さんにインタビュー
初回からさすがの存在感。近年、再評価の進む意次を世界的スターがどう演じるのでしょう。「意次を駆り立てたものは何なのかを表現したい」と語ります。石坂浩二さんとの“レジェンド対決”も楽しみです。 #大河べらぼう https://t.co/TrddqlMedt— 美術展ナビ (@art_ex_japan) January 5, 2025
これまでの時代劇では賄賂に目がない悪いお代官様という印象が非常に強かった田沼意次。演じるのは渡辺謙さん!!貫禄が凄い!!!でも、印象は商人に対しても気さくで好奇心旺盛、これまでのような悪の権化的なものは感じられない人物像。それがものすごく新鮮でした。
蔦重は田沼に吉原を救うために動いてほしいと懇願。ところがそれはできないと理路整然と背景を語られ幕府は何もできないと一蹴されてしまう。ここのやり取りも実に分かりやすいセリフ劇で思わず聴き入ってしまった。
それでも蔦重は朝顔姐さんのような悲劇をもう二度と繰り返したくない一心で吉原を救う手立てを講じてほしいと決死の直訴。蔦重の女郎たちを想う真剣な心からくる言葉の一つ一つが胸を打つ。そんな彼に田沼は「お前は何かしているのか?客を呼ぶ工夫を」と投げかける。その何気ない言葉が蔦重の心に火をつけた。
「田沼様!!お言葉、目が覚めるような想いがいたしました。まこと、ありがた山の寒がらすにございます!!!」
蔦重はこのドラマの中でいくつもの”ダジャレ”言葉を言いまくりますが、この「ありがた山の寒がらす」がしょっぱなから刺さりましたよねぇ。田沼はこの言葉をずっと覚えてるし。
しかしながら、意気揚々と帰ってくれば女郎屋主人の忘八たちから暴言をぶつけられまくりこれでもかというほどボコられてしまう蔦重(汗)。ここの描写はちょっと心配になるレベルでビックリ!民放でもあそこまで派手にボコボコにする作品は息を潜めつつあるというのに、まさかNHKで見ることになろうとはw。大河というよりも893映画見てるような感じでしたわw。思い切ったよなぁ。
それでも、どんだけやられても蔦重は決してへこたれない!!!それがこのドラマの一番の魅力。しかも最後に希望の光を見せて次に続く。第1話の掴みが最高でした。
あ、本当は数話を簡単に書くつもりだったのが・・・1話だけで長くなってしまった(汗)。それだけ面白い大河だと思っているということで。続きも時間ができた時にいくつか書ければと思います。