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NHK大河ドラマ『青天を衝け』第37回ネタバレ感想 栄一、あがく

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栄一最愛の人・千代が突然亡くなってしまってから3か月。渋沢家の食卓からは会話が消えて寂しい光景に…。それでも仕事は休ませてくれない。ただ黙々と働くことが彼を支えていたようにも思いますが、喜作たちは顔色が悪い栄一のことが気がかりでたまらない様子。

すると、そんな栄一を見かねたからか井上が「渋沢には早く次の妻を探さないといかんな」と言ってきた。喜作たちはこの発言には衝撃を受ける。井上は栄一の気持ちを慮っていたのではなく日本経済の要である存在として”内助の功”はどうしても必要だと考えていたんですよね(苦笑)。
でも、今後の日本経済のことを考えるとそれを否定することができないのも事実で…。心苦しいと感じながらも井上の提案を受け止めざるを得ませんでした。

現代の考えからするとちょっと理解しづらい井上馨の発言でしたが、それほど栄一は日本経済には欠かせない人物にまで成長してしまっていたのだなと少し驚いてしまいました。

未だ悲しみが癒えないなか、銀行の仕事で京都へ出張した栄一はその途中静岡の慶喜の元を訪問していました。静かに茶をたててもてなす慶喜に、千代のために香典を送ってくれたことに対する感謝の気持ちを伝える栄一。しかしその表情は生気を失っていて、かつて慶喜の前で雄弁に語っていたあの姿とは別人のようです…。そんな栄一に慶喜は弟の昭武も心配していたと伝えました。

かつて共にパリで苦楽を共にした昭武は一度陸軍に所属した後アメリカに派遣され、その後パリにも再留学することができたそうです。1回目は志半ばで帰国することになってしまいましたが、2回目のパリ留学が実現できたことは本当に良かったと思います。このことに関しては栄一も感慨深そうにしていました。
さらに慶喜は川村恵十郎も訪れて商法会所の頃の話を懐かしそうに語ったことを伝える。川村さまも元気にしているんだ。よかった…。

ところが栄一はその話を懐かしむと同時に静岡時代での千代との生活を思い出してしまったからかただただ涙を流すのみ…。

このシーンの時の吉沢亮くんの涙の芝居には心打たれるものがあったな(涙)。

慶喜はそんな不安定な栄一の様子をただ心配そうに見つめるしかありませんでした…。

以下、第37回を見て気になったシーンもろもろネタバレあり

これまでの『青天を衝け』感想レポ

青天を衝け
青天を衝け
2021年度NHK大河ドラマ『青天を衝け』の感想レビュー

『青天を衝け』第37回 栄一、あがく

2021年11月28日(日)放送 NHKBSプレミアム 18:00~18:45 ほか

出演:吉沢亮、高良健吾、草彅剛、大島優子、ディーン・フジオカ、忍成修吾、山崎育三郎、福士誠治、大倉孝二、中村芝翫、ほか

あらすじ

政府の命により、再び岩崎弥太郎(中村芝翫)に対抗するため、海運会社・共同運輸会社が設立された。しかし、栄一(吉沢 亮)は、千代(橋本 愛)を亡くして憔悴(しょうすい)していた。その様子を見かねた知人らの勧めで、栄一は伊藤兼子(大島優子)と再婚する。共同と三菱が熾烈(しれつ)な競争を繰り広げ、両社消耗していく中、突然、弥太郎が病に倒れる。これ以上の争いは不毛と、五代友厚(ディーン・フジオカ)は、栄一と弥太郎の弟・岩崎弥之助(忍成修吾)との間を取り持とうとする。

<公式HPより引用>

明治16年(1883年)、政府が出資して立ち上げた「共同運輸会社」が本格的に運用を開始しました。三菱から海運事業を取り返そうとみんな気合が入っています(栄一を除いては…ですが)。

みんなキリっとした表情をしているなかで、なぜか喜作だけ満面の笑顔なのが面白いww。でも栄一は…相変わらず覇気のない暗い表情をしていますね…。

立憲改進党を立ち上げた大隈重信や三菱の岩崎弥太郎は今回も結託して新会社を潰そうと目論んでいたようですが、世間の風当たりは以前よりも彼らに対してずっと冷たくなっていました。世論は共同運輸に味方する立場をとっていたのです。
大隈も岩崎も、ちょっとあまりにも目立ちすぎてしまったんですかねぇ。ズブズブな関係だったことも災いしてしまったようで(汗)。イケイケ時代はそう長くは続かないということでしょう。

自由民権運動による批判活動に対して大隈や弥太郎の弟の弥次郎は大激怒。「政府とつるんでるのは共同の方じゃないか!!」とめちゃめちゃ憤っております。弟くんもさすがお兄さんの血を引いているだけあってなかなかに熱いですねw。久しぶりに忍足くんが全面に出てるシーンを見れるのは嬉しい。

それにしても、町に出回っていたという皮肉たっぷりなチラシはなかなかの発想力だなと。大きなクマに矢がぶすぶすと刺さっている…、つまり「大きなクマ=大隈」を民衆が退治してるっていうことを表現してるわけですよねw。でも最初見たときは熊じゃなくてクロネコに見えちゃったのは私だけでしょうか(笑)。

大隈たちは頭に血が上ってプンスカしていましたが、当の弥太郎本人は「世の中にこんなに叩かれるなんて、大隈さまも三菱も大したものだ」といって大笑いしている。やっぱり只者ではないな、この人はw。
「岩崎はこの一手だけで日本を一等国にする」と政府の手を借りずとも自分自身の手で日本を持ち上げることを宣言する弥太郎。売られた喧嘩は正面から買ってやるとさらに気合を入れるのでした。この人について行ったらてっぺんまで行けるんじゃないかと多くの人が惹きつけられたのも分かる気がする。でも同時にすごい危うさも感じますけど(汗)。

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いよいよ三菱と共同による激しい主導権争いの幕が切って落とされる。その様子を町で威勢よく語っているのは講談師の二代目・神田伯山。当時は講談が大人気で町の人たちはそこから情報を得ることも多かったそうです。

演じているのは人気講談師の六代目・神田伯山さんです。小気味のいい語りっぷりはさすがの存在感でした。

三菱と共同によるお客のシェアを獲得する戦いは特に熾烈で、栄一たちはまず顧客サービスを見直すところから手を付けていました。前回はそこで失敗したらしいので今回は色んなサービス案が飛びだしていたようですねw。
ところが三菱はそれに対して値下げ作戦で対抗してきました。サービスの充実よりもお金を安くしたほうがお客を呼びやすいと考えたらしい。たしかにお金の問題も見過ごせないからなぁ…。この動きを共同もいち早く察知して三菱よりもさらに値下げしようと躍起になっている。

神戸と横浜を結ぶ航路における値下げ合戦は特に壮絶だったようです。さらにはスピード勝負というところまで発展していき、同じ時刻に出発した船同士で激しいつばぜり合いが勃発(汗)。とにかく先に目的地に到着しなければということとなり…、スピードを上げすぎた結果衝突事故を起こしてしまう事件が発生(怖)。いくら安くてもそんな恐ろしい船には乗りたくないわな(震)。

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その頃、伊藤兼子は三味線の師匠でもあったやすから”栄一の後添えにならないか”という話の依頼を受けていました。

少しためらっていた様子の兼子でしたが、「渋沢というのは、おかしろくていい男だよ」と楽しそうに笑うやすの姿を見てその気になったようです。”運が強い””名士の奧さんに”というワードも惹かれるきっかけだったかもしれません。

こうして兼子は栄一の後妻になることが決まります。ところが、栄一は未だに千代を失った心の傷が癒えていないため、彼女を前にしても一度も視線を向けようとせず俯き加減に淡々と挨拶をするのみ…。戸惑う兼子でしたが、栄一は事務的に「渋沢家の家政を任せたい。背負う事業が多岐にわたるためできるだけ子も多くほしい」と用件だけ伝えると無表情ですぐにその場を立ち去ってしまった(汗)。
これはちょっと、兼子さんお気の毒だったよなぁ…。気持ちはわかるけど、仕事の依頼をしているようなあの言い草はちょっとねぇ…。

歌子は栄一が兼子を後妻を迎えることに反対していました。これまで長く渋沢家のために尽くしているくににも気遣っていたようでしたね…。実際、栄一が再婚を決めたときにくにが後添えに入ると思っていた親族は多いようで兼子を新しく迎えることに戸惑う人もいたらしい。
栄一としては、不確かな身の上のくにを妻として表に出すことはかえって彼女への負担が大きすぎると判断してということでした。くにさんのこともちゃんと考えてくれていたのはちょっと安堵した。

それでも父の再婚について納得がいかない様子のうたに、栄一は「うたがいてくれてよかった。お前が頼りだ」と力なく告げて寂しそうに仕事へ出かけてしまいました。栄一が再婚相手に求めているのは自分の仕事を支えることだけ…。そのほかのことにはまるで興味がない様子でした。

その数か月後、歌子は男子を出産。手伝ってくれていたのはくに親子でした。

栄一も喜作と一緒にあわてて歌子の元へ駆けつけ感極まります。しかし、とっさに脳裏に浮かんだのは千代の顔だった。

「お千代に見せてやりたかった…。お千代は孫の顔を見るのをずっと楽しみに…」

と告げると居たたまれなくなりすぐ部屋を出て涙してしまう。まだまだ愛する人を失ったことの心の傷は深い。
そんな栄一を複雑な想いで見送りながらも、兼子は歌子の出産を祝福。さらに篤二にも「よかったね」と優しく語り掛けますが、千代以外の母親に納得できないからかムスっとして部屋を飛び出していってしまいました…。兼子さんの立場を考えると辛いなぁ(涙)。彼女は自ら望んで後妻に入ってるわけじゃないからなおさらね…。

栄一にとってさらに辛い出来事だったのが、千代が力を入れてきた東京養育院が廃止される危機にあったことでした。東京府会で「困ったものを助け新たな罪人を生まないようにすることは、人の道よりも社会のためになる」と訴える栄一でしたが、沼間から「人の道とはなんだ」と反論されてしまう。それどころか彼は、貧民がどれだけ苦しもうが自分には関係がないと言い放ち…哀しいことにそれに賛同する人が数多くいたのです。現代にもこういう考えの人は世界中に少なからずいますからね…。このシーンはなんだかとても見ていて心が痛くなりました。

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夏、岩倉具視が重い病の床に臥せっていました。暑さをしのぐために布団の周りには氷の塊が置かれています。岩倉具視は”咽頭がん”を発症してしまっていたそう(日本初の癌と言われています)。心配した三条実美と井上馨が見舞いに訪れるなか、岩倉は弱々しい声で「日本が欧米のような新しい国になっていかなければならないのは分かっているけれど、我々が目指した御上を王とする世の中とはまるで違ってしまった」と嘆いていました。
三条はそんな岩倉を懸命に慰めていましたが、岩倉としては彼よりも井上に言いたいことがあったようで三条さんをビビらせてたのはちょっと面白かったw。

岩倉は井上の胸ぐらを掴むと(チューしそうな距離感でドキッとしたわw)「御上は民を愛しておられる。日本は御上のもとでの立件国家を作らなければならないのだ。御上を軽んじれば必ず徳川の終わりと同じことになる」と必死に訴えた。井上は岩倉の気迫にビビりながらもなんとか了解した旨をつたえます。
すると突然、岩倉の頭の中にかつて左遷中だった頃に身の回りの世話をしてくれていたトメの声が響いてきた。

「岩倉はん、御上がおいでになりましたで!」

その幻の声を聞いたとたん、突然岩倉は「まぁ!?御上が!??」と言ったかと思うと勢いよく起き上がりどこか遠くの方に視線を向けている。それまで瀕死の状態だったのに急に生気を取り戻したかのような岩倉に三条も井上もビックリ仰天(笑)。しかし、岩倉には見えていたのです、敬愛してやまない御上の姿が。
「あぁ~~~…、御上!!」と感極まり手を合わせたその瞬間、岩倉具視は布団の上にうつ伏せとなり動かなくなってしまいました。この急転直下の出来事に三条も井上も呆然w。死の間際まで、天皇に忠誠をつくした人生でしたね。

いやぁ、最後の最後まで山内さんの演じる岩倉具視はクセが強かった(笑)。見る者を魅了してくれる怪演だったと思います。お疲れ様でした。

ちなみにこのシーンは明治16年7月に岩倉邸に明治天皇が実際に見舞いに訪れた時を描いた「岩倉邸行幸」と構図がほとんど同じだったのだそうです。私もその絵画をネットで見ましたが、なるほど、かなり忠実に再現されたんだなと驚きました。

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共同運輸と三菱による熾烈な戦いは未だに収まるところを知りません。とうとう船員同士による乱闘騒ぎまで起こる有様に(汗)。それでも栄一も弥太郎も戦いをやめようとしない。どちらかが主導権を取り相手を負かせたという実感を持てなければ終わりそうもありません。特に栄一は千代を失った哀しみをこの戦いで紛らわそうとしているように見えて仕方がなく痛々しい…。

次第に共同運輸が優勢になってきますが、弥太郎は全く諦めようとせずトコトン値下げをするようにと息巻いている。しかし、彼の体は既に病にむしばまれている様子…。さすがに弟の弥次郎も会社の今後のことや兄の体調が気がかりなこともあり以前のような勢いはなく引き時を探っているように見える。
その時、ついに弥太郎の体は悲鳴を上げ倒れてしまった。しかし気迫で気力を維持しギラギラした目つきで「奥の手がある」と告げる。何が何でも負けてたまるかというあの鬼気迫る精神力は壮絶以外のなにものでもないですな(汗)。そばに近寄るのも恐ろしいほど…。

激しい胃痛に苦しみながらも弥太郎が告げた”奥の手”とは、共同運輸の株を買い占めることでした。
そうとは知らぬ栄一たちは勢いのままに突っ走ろうとしていましたが、両者の戦いを傍観していられなくなった五代友厚がある日共同運輸を訪ねてきて「ここらがもう潮時だろう」と釘を刺しました。益田は「ここからが正念場だ」と息巻いて反論しますが、そんな彼に五代は弥太郎が共同の株をすでに過半数手に入れている事実を告げます。
衝撃を受ける喜作たちに、井上は「岩崎はこの会社を乗っ取ろうとしているのだ」と現実を突きつける。

しかし、栄一だけは未だに戦う意欲を失っていない。「それであなたはのこのこ仲裁にやってきたと言うわけですか」と厳しい表情で五代を批判します。世論の敵が岩崎になった今こそ徹底的に叩きのめすべきだと一歩も引こうとしない。目も据わり血走っている栄一の表情は常軌を逸しているようで恐ろしい…。
ところが五代はそんな栄一を見てフッと鼻で笑い、三菱が海運を一手に担ったのは政府の思惑もあったと告げる。それを今度は大きくなりすぎたからと言って潰すのは無情だと指摘。痛いところを突かれた井上は反論しようとしましたが、五代はそれに全く耳を傾けようとはしませんでしたw。

そのうえで五代は「こんな争いは不毛だ」とキッパリ栄一に告げる。仮に共同が三菱に勝利したとしても、今度は共同がシェアを独占していた三菱と同じことをすることになる。五代さんの言うことはすべてその通りで正論でした。

「もうちょっと大きな目で、日本を見んか!!」

五代は栄一に目覚めてほしい一心で訴えるように声を荒げました。しかしその言葉は今の栄一に届かなかった…。「自分は大きな目で日本を見ている。岩崎のほうが見ていないのだ」と主張し、果てはパリでの恨み言まで口にしてしまう(汗)。これにはさすがの喜作も驚いてツッコミを入れていましたが、それでも栄一の固執した考えは暴走し続けるばかり…。

それでも五代は根気強く「こんな戦いは日本の損失でしかない」と指摘するものの、栄一は「これは岩崎さんの独裁と俺の合本との戦いだ。刺し違えても勝負をつける」と全く聞く耳を持たなかった。千代が失った哀しみを三菱との戦いに全精力を注ぐことで紛らわそうとしているところも大きかっただろうから、自分の過ちに気づくのは難しいのかもしれないよなぁ…。さすがの五代さんもこれ以上栄一に何も言えなくなってしまった。

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不毛な戦いは泥沼となり、政府も頭を抱える事態となってしまう。一向に勝負がつかないことに大きな焦りと憤りを感じた栄一はついに政府の伊藤の元へ乗り込んでいく。そして、三菱のやり口が卑怯だということを無我夢中でまくしたて告発し、なんとか政府の方で制裁を加えてほしいと訴える。
その間伊藤は何も口を挟まず、ただ静かに周りの障子を一つ一つ閉めていきました。栄一の常軌を逸した行動を他に見せないようにと配慮してくれていたのだろうか…。

栄一の演説が終わったのを確認した伊藤は「どうも今日の渋沢君は妙だな」と落ち着いた口調で語り始めました。

「渋沢くんが己を正しいと主張するのはまぁ構わん。だが、その正しさを主張したいがために敵の悪口を言いふらすというのは、それこそ実に卑怯千万なやり方じゃないだろうか」

自分は正しいと思い込んでいる栄一の心を見透かしたように、伊藤は「こんな卑怯なやり方をされたら困る。少し慎め」とピシャリと言い放ちました。これは素晴らしい指摘でしたね!!さすがは将来総理大臣になる器の人だけあるわ。いっくんの演じる伊藤のセリフ一つ一つの説得力がとにかく素晴らしかった。

さすがの栄一も何も言い返すことができなくなった。そして次第に冷静さを取り戻していく。少しシュンとして座り込んでしまった栄一を見た伊藤は、「まぁわしも岩倉様を裏から突いて大隈さまを追い出したんだがな」といたずらっぽく笑いながら告げました。こういう気遣いも素晴らしいね、彼は。
伊藤は「自分を正しい人間だとは思っていない」としたうえで、大隈を追い出したかった理由を「彼は急ぎすぎていたから」と弁解する。それは、新しい憲法を作ることと関連していたようですね。伊藤と大隈はドラマでは描かれていませんが、憲法の考え方で対立してしまった経緯があったらしいです。

「わしは、日本独自の憲法を作り国民が育てば議会を作り民意を取り入れたいと思っている」

大久保、岩倉、西郷といった新しい世の中を作るために切磋琢磨してきた人物たちに敬意を感じていると語る伊藤。おそらく、大隈のことも憎んでいたわけではなく考え方が違ってしまっただけだから合致することがあれば一緒にやることも構わないと思っていたかもしれない。伊藤の器の大きさを感じますね。

「ようやくここからが新しい日本のスタートだ」と目を輝かせる伊藤を目の当たりにした栄一は、「まさか、結局一番大きな目で日本を見ているのはあなたなんですか?」と呟いてしまいます。伊藤はそれに対しては面白そうに笑うのみでした。

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明治18年(1885年)の2月、ついに岩崎弥太郎は重い病で動けなくなってしまいました。岩崎の病名は胃癌だったそうです…。病を押してギリギリまで仕事に勢力を向けたことが彼の命を縮めてしまう結果となってしまったらしい。
ベッドに横たわりながら「渋沢はまだ音を上げないのか」と悔しそうに告げる弥太郎。弥次郎たちはその言葉に無念さをにじませながら頷くしかない。すすり泣く弟たちに「もう一度盛り返したい」野望を語りその事業を弥次郎に託すことを告げた弥太郎。そんな兄の無念の思いを弥次郎は痛感していたようで悔しさから涙が止まらない…。彼は兄のために本当に良く尽くしたと思うよ。

そして死の間際、岩崎弥太郎は最期の力を振り絞るように自らの想いを吐露する。

「国のためだ…!日本を一等国に…!世界の航路に、日本の船を…!日本に繁栄を!!」

いやぁ…、もうここは、中村芝翫ここにあり!って感じの大熱演でしたね。もう、まんま歌舞伎の見栄を見てるようでしたよ。さすがの貫禄。あの世の岩崎弥太郎さんも、香川照之さん同様に強烈に演じてくれたと満足しているのではないでしょうか。

岩崎弥太郎、享年52。道半ばでの最期でした。日本を一等国にしたいという強烈な想いは、最後は”共同運輸、渋沢栄一に勝ちたい”という「私欲」へと変わってしまったような気もします。そこが本当に残念でしたね。

弥太郎の訃報を受けた栄一は俄かに信じることができないくらい驚いていました。「あの人は死んでも死なないはずだ!」というのは、確かにそうだなと思ってしまうw。それと同時に、五代友厚の命ももう長くないとことも知り衝撃を受ける。

数か月後、杖をつき目の焦点が合わないくらい体が弱っていた五代が共同運輸を訪れる。治療のために大阪へ戻る前に、三菱と共同運輸の今後の話し合いの仲介を買って出てくれたのです。
競争を続けていった場合、三菱の寿命は1年、共同に至ってはあと100日しかない状況だという。日数的には三菱のほうが有利ではありましたが、弥次郎は疲れ切ったように「勝ったとしても満身創痍だ」と力なく答えました。

双方の状況を把握した五代は、両社が共倒れしてしまう未来を見据えたかのように「その後は必ず外国の船がやって来て日本の海運業を牛耳ることになるだろう」と予言する。そのことは両社とも分かっていた為、五代の言うことに誰も反論することはできませんでした。
外国の進出を阻むために選ぶ道はただひとつ、共同と三菱が手を組み合併するしかない。覚悟を決めた栄一は立ち上がり弥次郎と握手を交わす。こうして、二つの会社の壮絶な2年半の戦いは幕を閉じ新たに「日本郵船会社」が設立されることになりました。

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皆が帰った後、五代と二人きりになった栄一は「ありがとうございました」と頭を下げます。でもこの当時、もう五代さんは栄一の姿すら見えていない状態だったと思います(涙)。
栄一は五代ともっと仕事をしたいから早く体を治してほしいと訴えます。しかしそれに対して五代は穏やかな表情で「おいが死んでも、おいが作ったものは残る」と告げる。天に恥じることなく真っ直ぐに日本のために働いてきた五代友厚。もう何も見えず光だけを感じるような体調だったとは思いますが、その表情はどこか清々しく…そしてとても美しかった(涙)。
それでもやはり、心残りがないと言えば嘘になるのでしょう。最後に無念の思いを栄一に告白していました。

「じゃっどん、見てみたかった。これからもっと商いで日本が変わっていくところを…。この目で見てみたかった」

切ないーーーー(涙)!!!五代友厚は重い糖尿病で立っていることも難しくなり、最後は視界をも失ったと言われています。そんな彼が、「この目でこの先の日本を見てみたかった」と告げるのはあまりにも切なすぎる…。財閥も作らず日本の国のために突き進んできた五代友厚、もっともっと長生きしてほしい人物でした。

「渋沢くん、日本を、頼んだぞ」

栄一は黙ってその言葉を受け止め、五代の姿を必死に瞼に焼き付けているようでした…。

同じ年の秋、五代友厚は大阪へ行くことなく東京の別荘で49年の生涯を閉じる。まだまだ働き盛りのなかでの無念の死でした…。葬儀は大阪で行われ、5000人近くの人が参列したと言われています。

五代友厚は阿倍野墓地で今も静かに大阪の町を見守っています。大阪へ遠征した折に時間ができたときには私も墓所を訪れお参りしています(案内板はありませんが、大きな木があるので比較的わかりやすいです)。

朝ドラでお別れしてしまったディーン・フジオカさんの五代友厚に、6年を経て今度は大河ドラマで再会できると思っていなかったので本当に嬉しかったです!朝ドラとは全く違った魅力を繊細に演じてくれたおでぃーん様、素晴らしかった!!ありがとうございました。

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五代の死から少し経ったある日、兼子が突然離縁を申し入れてきた。突然予想外の申し出をされた栄一は驚きを隠せない。しかし兼子は、全く愛情を感じられない妻としての日々に限界を感じてしまったようでした。
妾ではなく妻として立派な人の元へ嫁げることに、兼子は密かに喜びを感じていたようですが…現実はそれとは全く違っていた。最初は「妻」という立ち位置があればそれでいいと思っていたものの、次第に「それ以上」のものを求めるようになってしまったのでしょう。そりゃそうだよね。自然な感情だと思います。

「あなた様の心も未だ、前の奥様にあります」

そのことは嫁ぐ前から承知していたし、理解もしていたはずの兼子。それと同等のものを求めようなどとも考えてはいない。でも、全く「情」がないというのはいくらなんでも耐えきれない。気持ちが伴わなければ子供もできないとハッキリ告げる兼子。
栄一のみならず、篤二からも懐かれることがなく精神的に追い詰められた状態になってしまっていた。千代の代わりになることも到底できない。こんな八方塞ではもう、離縁を申し入れるしかないという気持ちはよく分かります。

兼子の本心をこの時初めて知った栄一は、これまでいかに自分が彼女のことを軽んじてきたのかを思い知らされる。でも、あまりにも後妻をとった時期が早すぎたからなぁ…。気持ちの整理ができないまま新しい奥さんを迎えざるを得なかったわけで、どうしても気持ちが兼子さんに向かなくなってしまったという気持ちは分からなくはありません。
でも、だからと言って情のない対応をするのもまた違う。後添えとして迎え入れたからには、やはりそこに思いやりは存在していてほしい。

自らのこれまでを振り返り兼子に素直に謝罪した栄一は、それと同時に彼女に感謝する。いつも日本のためとか言いながらも目の前のことしか見えていない自分はちっとも立派ではないと苦々しく語り始める栄一。至らない自分は、常に周りの多くの人に助けられて何とかここまでやってくることができた。兼子に離縁を突きつけられた今、そのことへのありがたさが実感としてこみ上げてきた。

「これからは、俺をもっと叱ってくれ。尻を叩き、時には今のように”捨ててやるぞ、このへっぽこ野郎!”と罵ってくれ」

「へっぽこ野郎」という表現はいかにも栄一らしくてちょっと面白かったw。兼子はまさかそこまで栄一が頭を下げてくるとは思わなかったのでかえって慌ててしまう。それでも栄一は改めて彼女に懇願する。

「俺はどうしても、この家を、家族を守っていきたい。どうか、力を貸してください」

あまりにも真っ直ぐな栄一の言葉に心を打たれた兼子は、離縁の申し出を撤回して彼の妻としてもう一度励もうと思い直したようでした。
だけど、栄一としては兼子はやはり「愛情」の対象としてはどうしても見れなかったのかもしれないなと思いました。どちらかというと、ビジネスパートナー的な感じじゃないかなぁ。思いやりを持って接していこうという気持ちはあれど、愛しいという気持ちは湧いてこなかったのではないだろうか…。

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兼子と改めて向き合うことを決めた栄一は、さっそく彼女と協力して廃止寸前にあった東京養育院を請け負い、自ら経営していくことに決まりました。養育院には千代の魂も宿っていますから、栄一としてはどうしても潰したくなかったのかもしれません。その気持ちはきっと兼子も理解していたと思います。

経営の費用のために何かできないかと考える栄一に、兼子は鹿鳴館でバザーが開かれたことを伝えます。それを聞いた栄一は養育院でもバザーを開こうと決意。歌子もそれに協力すると言います。兼子と歌子の関係は、良好なようですね。

帰り際、千代の魂と触れたような気がした栄一。その表情にようやく生気が戻ってきたように見えました。やっと前を向く気持ちになれたのかな。

明治18年(1885年)12月22日、日本に内閣制度が発足し、そのトップの内閣総理大臣に伊藤博文が任命されました。

同じく候補になった三条実美のほうが位が高かったものの、井上馨が「総理は英語ができる人物でなければいけない」と意見して伊藤に決まったという経緯があったようです。井上馨は外務大臣に就任しています。

その3年後には大日本帝国憲法が発布。天皇を国の元首としつつ、伊藤博文らがそれを支えながら政治を行うことが定められました。

この時には栄一と兼子の間に2人の子供ができていたようです。一見するととても幸せそうな家族に見えます。しかし、栄一たちは気づいていなかった。18歳の青年に成長した篤二が暗い目をしてそれを見つめていたことを…。

泉澤くん、こんな不穏な雰囲気で登場するとは!これからどんどん道を外れてしまう篤二がどう描かれるのか期待したいと思います。

完全版ディスク発売中!(第弐集は12月発売予定)

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